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帽子を被る(かぶる)とは?正しい表記と歴史や文化を詳しく解説

「帽子をかぶる」の「かぶる」は「かぶる」と「被る」どっちで書いた方がいいでしょうか?

「帽子を被る」と書くとき、ふと「被るってこの漢字でだけえ?」と迷ったことはありませんか?

普段何気なく使っている言葉にも、実は国語のルールや歴史的な背景があります。

本記事では、「かぶる」の正しい書き方と、帽子にまつわる文化や豆知識を解説します。

帽子を「被る」、本来は「かぶる」と平仮名で書く

結論から述べると、帽子を「被る」とは漢字ではなく平仮名で書きます。

なぜなら、「被る(かぶる)」と読むのは、常用漢字表にない訓読みだからです。

公的文書や学校教育の場面では、読みやすさや誤読を防ぐ観点から、ひらがなで「かぶる」と記すのが原則とされています。

また、新聞や教科書などでも同様に、表記ルールとして仮名表記を用いることが多いです。

とはいえ、私的な文章での漢字使用は禁止されているわけではなく、文脈や文章のバランスに応じ、漢字とひらがなを使い分けると良いでしょう。

「帽子をかぶる」という言語の由来と本来の意味

「かぶる」という語の由来は、上代日本語(※1)の「かがふる」にさかのぼり、そこから「かうぶる」へと変化し、さらに現代語の「かぶる」へと転じたと考えられています。

意味は、「頭の上から物を覆うようにすること」で、現在の「帽子をかぶる」という表現に自然とつながっています。

また、常用漢字表における「被る」には「こうむる」という訓読みが採用されており、「かぶる」は常用漢字表外読みとして仮名書きを基本としています。

書く場面「かぶる」をひらがな表記にする理由
公文書常用漢字以外の訓読みを使うときは平仮名で書くのが原則。例:「帽子をかぶる」
学校教育(小中)小中学校の国語教育では、常用漢字・学年別配当漢字に準拠して仮名書きする。
新聞・テレビ字幕読みやすさと表記基準(常用漢字に従う)から、平仮名表記を採用。
教科書・入試問題教科書会社や試験機関も文部科学省の基準を踏まえ、「かぶる」と仮名で書く。
官公庁の広報資料国民全体に向けて平易な表現を使う必要があり、「かぶる」などはひらがなにする。

参考:常用漢字表(文化庁・内閣告示)

※1 上代日本語とは、古墳時代頃から奈良時代頃まで日本(特に、都のあった奈良付近)で使用されていた日琉語族(主に日本本土と琉球諸島)の言語。 - Wikipediaより

帽子をかぶるの具体例

では、以下で「帽子をかぶる」の具体例を挙げていきます。

① 公文書・新聞・報道機関など

例:「ヘルメットをかぶって避難してください」

誤読を避けるため、常用漢字にない訓読みは原則として仮名書きにされます。

② 小学校・中学校の国語や作文教育

「ぼうしをかぶって学校へ行きました」と教える。

文部科学省の学年別漢字配当表によると、「被」は中学生が覚える漢字です。

「被」は音読みで(ヒ)訓読みで(こうむる)とし、「かぶる」という読みは教育漢字に含まれないため、仮名で書くことを基本とします。

「被る」には、以下のように「こうむる(損害を~)」という意味があり、誤解を招きやすいです。

  • 被告
  • 被害者
  • 被災地

そこで、「かぶる」は仮名読みにて固定することで、「かぶる」と「こうむる」という読みの混同を避けられる上、理解しやすくなります。

帽子文化の発祥とその変遷

帽子の起源は古代ギリシャにさかのぼるとされ、農夫や旅人が日よけに身に着けていた『ペタソス』という帽子がその一つとして挙げられます。

その後、中世ヨーロッパでは社会的地位や身分を示すアイテムとして帽子が発展し、日本でも明治以降に西洋文化の影響を受けて普及しました。

和装との違いや生活習慣の変化を経て、現在では季節の必需品やファッションの一部として定着しています。

参考:ウィキぺディア:ペタソス

「帽子をかぶる」は英語で何て言う?

帽子をかぶることは、「着る」と同じように「wear a hat」と表現されます。

ここでの「wear」は、衣類や装飾品を身につけている「状態」を示します。

「動作」を表すなら、「put on a hat」のように言い換えることも可能です。

・He always wears a hat.(彼はいつも帽子をかぶっている)
・He is putting on a hat.(彼は帽子をかぶろうとしている)

帽子をかぶったままはマナー違反?場面別に解説

帽子の着用は、場面によってマナー違反と見なされることがあります。

特に日本では、室内や目上の人と対面する際や、挨拶をする時に帽子を脱ぐことが礼儀とされています。

これは西洋の紳士文化や、武士の作法に由来し、兜を脱いで敵意がないことを示す意味も含まれていました。

一方で、女性の帽子は装飾の一部と見なされ、冠婚葬祭時などは室内でも着用が容認されています。

またホテルのロビーや、電車やバス、飛行機といった公共交通機関など、許容される場は少なくないのです。

なぜ帽子をかぶるのか?現代における役割と意味

現代における帽子の役割は多岐にわたります。

  • 日差しを防ぐ
  • 寒さをしのぐ
  • 雨を避ける

このような実用面に加え、防護具やユニフォーム、ファッションの一部としても活躍しています。

また、特定の職業や文化では、帽子が地位や所属を示すシンボルにもなっています。

特定の職業や組織

  • 警察官:制帽は階級や所属を示すデザインになっている
  • 消防士:色や番号によって部隊や配属が識別できる
  • 軍人:所属部隊や階級を区別
  • 鉄道員:職務ごとに異なる制服帽(駅務員、運転士、駅長、所長など)
  • 航空会社の乗務員(パイロット・CA):会社や等級を象徴する帽子を着用
  • 警備員・保安員:企業ロゴ入りの帽子で所属を示す
  • 調理師(シェフ・パティシエ):トック(高い帽子)は熟練度や立場の象徴

宗教・文化的背景

  • ユダヤ教徒:キッパー
  • イスラム教徒:ターバンやクーフィー
  • カトリックの聖職者:ミトラやカロッタ
  • シク教徒:ターバン
  • 仏教僧侶:帽子(もうす)

以上の通り帽子には、効果や実用面に加え、職や文化の深い意味合いも含まれているのです。

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